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 僕らには、空にもお墓がある。  そんな奇妙なことになったきっかけは、僕が小学校入学を控えた冬に起きた。  母が亡くなったとき、僕は死というものをまだよくわかっていなかった。  葬儀を終えた夜、父は泣きつかれて眠っていた。  眠れなかった僕は、縁側でお酒を飲む祖父に、母はいつ帰ってくるのかと聞いた。  そりゃあ困ったことだろう。  小学生になる前の子どもにどう説明するか、祖父の立場になって考えてみると、頭を抱える。  祖父は言った。  ーーお母さんは、遠くへいってしまったんだ。  ーーいつ帰ってくるの。  ーー悲しいがな、帰ってこれなくなってしまったんだ。  ーーどうして? ぼく会いたい。  会いたいと駄々をこねる僕に、祖父は八方塞がりだったのだろう。  ーーお母さんは星になって、空からずっと見守ってくれてる。  そんなベタな文句で、優しく納得させてくれようとした。  しかし僕は、昔からどうでもいいことが気になる質だった。  ーーどれ? どれがママ?  その時の祖父の顔は、今でもよく覚えている。  また、祖父の実家がド田舎にあったこともわざわいした。     
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