春、それはとても静かな日の一杯のコーヒー

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春、それはとても静かな日の一杯のコーヒー

別段、私は人間が嫌いという訳じゃない。 一人で居るのが好きという訳でもない。 ただ写真を撮るのが好きなだけだった。 写真を撮っているといつの間にか一人になるだけだった。 友達が欲しいと思ったこともある。 語り合う仲間が欲しいと思ったこともある。 だけど、それらは、私にとって写真を撮るより重要ではないだけだった。 そうして15を超え高校生となった私は銀塩倶楽部という、 小洒落た──あるいはカビ臭い名前の部活に入部することになる。 古株の教師が郷愁で残している、名だけの部活。 祖父に死なれ、現像場所を失っていた私にとって、そこは唯一の居場所になった。 何があるでもなくただ静かにうつろいゆく季節。 気の向くままに写真を撮り、週末には現像する日々。 普通の高校生や大人達から見たらあまりにもわびしい生活に見えるだろう。 だけど、これが私にとっては至福の時。 誰かに理解されるとも思わない。されたいとも思わない。 ただただ私だけの世界。 それだけあればよかった。
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