夏、一人と一つ

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夏、一人と一つ

あれから彼女は部室に居着くようになった。 「入部した」ということではない。 ただ静かな場所が欲しかったのか、なんなのかは知らないが、 何をするでもなく粛々と私の定位置から少し離れた席に居るようになった。 私が撮影に出かけている時も部室に居る事があるようで、 施錠をしに部室に戻ると洗われたコップが置いてある事がある。 流石に顧問が置いているコーヒーではなく自前の物で淹れて飲んでいるようだが。 そんな訳で、狭い部室に一つ定位置が増えた。 だからとて私も彼女も互いに何かをする訳でなく、 ただそこに居るだけの存在だった。
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