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「おめーつえーな、俺の配下にならないか」
「はい、あなたならついていけそうです」
「そうだ。そこのメイド長さん」
「わたくしはメイーヌでございます」
「そだ、メイーヌさん、飯頼むはここ最近食って無くてな、そだ。肉はだすなよ、全部野菜だけだ。魚もだめだぞ、俺様はベジタリアンだからな」
「は」
「お、昔お世話になったやつの生まれ変わりがいるそうだな、ここの地下か? セバスダン」
「は」
「お、あんたなんで自分の名前をしれたか気にしなかったな」
「は、主人への口答えは奴隷としていけません」
「てぃってぃ、それはいかん、俺様に意見をいうくらいじゃないとな、俺様は絶対お前を殺さないし、ぶっ飛ばさない、それは俺様がお前の生まれから、祖先、しまいには今後どういった人生をおくりそうななどと、知ってしまったから誘っただけだ。お前は敵にはしない」
「はい、ではリュードさん、よろしくお願いします」
「いいってことよ」
セバスダンに案内されて地下にいくとそこにはたくさんの奴隷たちが捕まっていた。
「コロシアムで殺させるための戦闘奴隷です」
「はいはい」
少年臭さの残る童顔の勇者がぱんぱんと手をたたいた。
するとみんなが勇者を見た。
「俺様は最強勇者、この国を乗っ取らせてもらった。この国と、この世界そのものをよい世界にするため、ベジタリアンな俺様はお前らを解放する。仕事も与える。仕事がいやならどっかいけ、狩でもして生活しろ、この国で暮らしたいなら、衣食住は提供する」
全員が唖然としながらこっちにおそるおそると近付いてくる。
「ほ、本当ですか?」
「ああ、そうだ」
「自由になる? 仕事ってなんだ?」
「仕事は、大きくわけて三つ、大工になるか酪農家になるか見回り兵になるかだ。どんどん職業を増やしていくつもりだ。どうだ?」
全員の拍手喝さいに重なり、次から次へと開け放たれた地下牢から人々が出ていく。その数二百人。セバスダンが彼らに衣食住を提供する手続きについて説明するために地上に戻っていった。
しかし一人の娘だけがずっと下を向いて泣いていた。
その娘はもしかするとリュードが本気を出さないと倒せないくらいの強さと可能性を秘めていた。
「となりいいか」
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