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その娘の名前は前世がミール。初めての異世界のときいろいろと魔法やらスキルを教えてくれた女性、初恋でもあった。
彼女は魔王戦で殺された。
彼女はどうやらオオカミの獣人に生まれ変わったようで、背丈はリュードより小さい、年齢はおそらく十七くらいか、耳の長さで年齢がわかり、毛のつやでもわかる。
彼女は嗚咽を上げながらこっちを見た。
「ひっぐ、今日の朝ごはん食べ忘れた」
どすーんとぶっこけそうになりながら、リュードは苦笑した。そういえばミールもそんな感じだったな。
「ミール、久しぶり」
「お兄さんだれ? うちミルだよ? 母上に知らない人と話ちゃいけないって言われてるの話しかけないで」
「その母親はどこにいるんだい?」
「うちが殺しちゃった」
その冷たい発言でリュードはすべてを悟った。彼女はおそらく母親をコロシアムで殺したことを覚えていて実感していない。
おそらく母親が彼女を守るために、殺させるふりをして死んだのだろう。そのときのミルの心境は普通じゃ考えられないほどの悲鳴だったに違いない。
「なぁ、お前はもう自由だ。よかったら俺様と仲間にならねーか」
「いいよ」
「即決か」
「だってコロシアムがないならいくところないし、お兄さん強いから一緒にいれば面白そうだし」
リュードはにこりと笑った。童顔でちょっとぽっちゃり体系だったあのころ、前世の彼女を守るために痩せた自分。そして最近太り始めたと思ったら筋肉がすごいことになっていた。
ミルと一緒に地上に出ると、セバスダンがあたふたしていた。
「まずは住むところの提供なのですが作ってもらうことになりました。スラム街を立て直す計画を考えてみたのですが」
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