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「なつかしい?」
そう言いながら俺の背中から首に腕を絡めてきたアリアはついさっきまで激しく愛し合っていたために、何もきてはおらず、汗ばんだ彼女のきめ細やかな肌が俺の背中にぴたりと張り付いてくる。
女と言うよりはまだあどけなさの残る少女であり、背中に張り付く二つの塊は年相応の膨らみでしかないのだが、その伝わってくる温もりを俺は愛しく思う。
「そんなわけないだろ。もう二度と戻らないと決めて出た街だ。ろくな思い出しかない」
そうだ。
俺にはろくな思い出しかないのだ。
武器商人として滅亡に導いた国の数など覚えていないし、俺が売った武器で奪われた命の数も数えてところで仕方がない。
弱い奴が淘汰される世界なのだ。
そして、アリアと出会ったのもそんな残酷な世界だった。
「どうか娘だけでも助けてください」
政府軍に武器を売り込むために、現地視察中に巻き込まれた市街戦で負傷し、大量に出血しながら俺の腕にすがりつき、現地の言葉でそう言い残して生き絶えた若い女の反対の腕に抱かれていた赤ん坊がアリアだった。
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