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そんな廊下を執事はまっすぐな背筋と優雅な歩き方で進む。後ろを行く男は、それが少し意外だった。もっと女っぽく不自然なしなをつくった感じで歩くだろうと思い込んでいたからだ。
冷血。
(そうだ、この執事には冷酷にすら見える優雅さがある)
***
老人の寝室に入り、男を残して執事は退室した。
天蓋のついた巨大なベッドで横になっている祖父に、男は近づいた。
執事は男が見舞いに来たことを告げたはずだが、老人は目覚めなかったらしい。シルクの寝具にくるまって軽いいびきをかいていた。
男は一度ベッドをのぞきこみ、それから部屋中をぐるりと見回した。
どこもかしこも古めかしい造りだったが、それだけに細かい部分に趣向をこらしているのがわかる。窓枠もマントルピースもケルト文化を連想させるような流水模様が浮き彫りになっているし、驚いたことに、造りつけの書棚はステンドグラスの扉がついていた。
ソファとベッドの間に車椅子がおさまってあり、暖炉には赤々と炎が燃えさかっている。
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