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「脱獄……と言ったな。おまえは自分の罪を……償うべき人間なのだぞ」
いまやベッドのはしに腰掛け、男は上機嫌だった。
「わかってねえなぁ、あんたは。おれはあんたのたった一人の肉親だぜ」
「わしの遺産は、すべて……」
「あの執事が経営する本屋に寄付するんだろ? ばかじゃねえの。いまの時代、本なんざ売れねえのによ」
「ちがう、執事は希少な本を管理しているのだ」
「はぁ?」
「世界に一冊だけの本を……。その人間の人生を記録した本を管理している……。その本を出す契約により、わしは、一代で財を成すことができた。そして老いたいま、あの男の世話を受けている……」
「ふん、男狂いの色ボケじじいめ」
「そうではない。あの執事は絶対読者なのだ」
「絶対読者? なんだ、それ」
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