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「借ります」
しばらくすると、彼女がカウンターに戻ってきた。両手には分厚い国語辞典を抱えている。
テストの時期なんだろうか……?
そんなことも思った。彼女が着ている制服はこの近くの中学校のものだ。たしかにテスト期間になると、多くの生徒さんがこの市民図書館を利用し、辞書を引っ張り出してくる学生さんもいないことはない。
だが、それを借りていく子となるとかなり少なくなる。
「なに?勉強?」
本を受け取る際に何気なく聞いてみたものの、彼女はずっと無口だった。少し淋しい気持ちになりながらも、僕は国語辞典についているバーコードを読み取った。
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