おたのしみ便

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その絵は、次に訪れた彼女の部屋にきちんと飾ってあった。 机やタンスではなく彼女のベッドの枕元に配置されたその絵を見て、深い満足と安心を覚えた。 「ね、化粧水ってもう使ってる? こういうやつ」 鏡子が見せてきたローティーン向けのファッション誌に、わたしは圧倒された。 基礎化粧品のあれこれ。先生にバレないメイクアップ。一週間のおすすめコーディネート。恋占いに、おまじない。 こういう雑誌があったのか。なんという情報量。少女漫画誌しか知らなかった自分をひどく幼く感じた。 「全然使ってない。え、顔洗った後って何かつけた方いいの?」 「そうだよ。じゃなきゃ肌が乾燥しちゃう」 鏡子はいつだってわたしの先を行く。女子バレー部に入り、髪をばっさり切った彼女は、逆に女らしく、垢抜けて見えた。美術部でぬくぬくと絵を描くばかりで少し太ったわたしとは大違いだ。 「基本、ローション、乳液、クリームの順だよ。……それよりさあ、あのね」 「ローション、乳液、……ん?」 「あたし彼氏できるかもしんない」 思いがけない言葉に、わたしは意表を突かれた。
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