おたのしみ便

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「彼氏!?」 「うん」 学習椅子の上で膝を抱え、トトロのぬいぐるみを胸元に抱いて鏡子はこくんとうなずいた。 お洒落でスポーティーな鏡子だけど、その仕草は昔の幼い彼女のままだった。 「誰!? 同級生!?」 「ううん、西高のひと」 「西高?」 「うん。こないだ、交流試合の帰りに告白されたの」 「……付き合うの?」 新人賞への投稿用の少女漫画を描き始めていたわたしは、親友が恋愛に足を踏み入れようとしていることに、言いようのない焦燥と羨望、そしてはしたないほどの興味を覚えた。 「わかんない。返事はいつでもいいって言われて、もう3週間も経っちゃった」 「うそー……。かっこいいの? どんなひと?」 「向こうの男バス部のキャプテン。背はもちろん高いし、顔もそこそこかな。優しそうな感じ」 親友をわたしの知らない世界へ連れて行こうとしている他校の男子のビジュアルを想像しようとしたけれど、うまくいかなかった。情報が少なすぎる。
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