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転機というのは、ベクトルの異なる方角を見ているときに訪れるものかもしれない。
鏡子と違って遅咲きだったわたしに初めての彼氏ができたのは、高3の秋だった。
漫画の新人賞にいくら出しても箸にも棒にも引っかからず、一度区切りをつけて大学受験に集中しようとしていた頃だった。
駅前の図書館の隅で鏡子が送ってくれた湯川大社の合格祈願鉛筆を削っていると、他校の制服を着た男の子が目の前の空席にすとんと座った。
そのままじっと動く気配がない。
どうにも気になってとうとう顔を上げると、彼は頬杖をついた姿勢でまっすぐにわたしを見ていた。目が合った。
なんだかどぎまぎして鉛筆を削る作業に戻ると、目の前にすっとメモが差し出された。
「ケータイ持ってたら番号教えて」
美しい文字で、そう書かれていた。
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