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気づけば震える指先で電話番号をプッシュしていた。
ミラノはまだ、朝の5時? そんなの知らない。
きょうちゃん。きょうちゃん。
プルルルルルルルル。
無機質なコール音が鳴り続く。
つながったら、言うんだ。
あなたの声と笑顔をください。
なんとか都合をつけて、帰ってきてください。
それが今、わたしにとっていちばんのおたのしみ便になるから。
それが無理ならせめて、あなたを感じられるものを送ってほしい。
無垢な少女だったあの頃のように――。
そう思い定めて、かたくかたく、冷たい受話器を握りしめ続ける。
【完】
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