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鞄に入っていた携帯が私の体を通じて震えているのが分かった。途中で止まって携帯を取り出して確認をしてみた。
仕事終わったか?飯食いに行こうぜ。もちろん、オレの奢りだ。可愛い後輩のお前に金なんて出させねぇから心配するな。終わったら返事くれよ。
豪快かつ自称体育会系のノリでいきなりLINEしてきた大学のサークルの先輩は、私を可愛い後輩だといつも口に出している。奢るのが男のプライドだとか?それは、一人暮らしの私にはありがたいけどいつもマイペースで店も勝手に決められる。先輩の選ぶお店にハズレは無いけど…
「…麻咲さん、困った顔してるみたいですが大丈夫ですか?」
「ご飯のお誘いが大学の先輩からあって返事しようかと…」
「僕と一緒にご飯食べてくれませんか?駅地下のバルにいいお店があるんですよ。一緒に行きましょう。」
私の顔に異性の先輩とご飯と書いてたのか、年下君は私の手を繋いで引っ張っていった。予想外の事にいつも動揺してしまう。
「このお店、タベトクに載ってましたよね?気になってたお店です。」
「それは良かった。麻咲さんの顔に行くかどうか迷ってるって書いてましたから強引に連れてきました。あっ、もう仕事オフだから名前で呼んでいいですよね?それに、ここなら個室があるから話しやすいです。」
人の顔色うかがいまで出来て空気も読める。私が顔に出やすくて分かりやすいタイプなのかもしれないけど、彼のリードに私は悪くないと思っていた。
「このカクテル美味しい。来て良かったって、まぁちゃん?」
「あーちゃん!?と、旦那さん?」
店に入った途端にカウンターで飲む見慣れた女性に驚いた。私の友達の一人で愛未(あみ)通称あーちゃん。人妻で小悪魔タイプ。
「そちらは、彼氏さん?やっと彼氏捕まえたんだね。」
「酔ってるでしょ。また、後日話すから今は聞かないでね。じゃあ、旦那さんとごゆっくり。」
COOLに振る舞う私。愛未が酔った状態でまともなトークなんて出来ないのは毎度の事。シラフ状態なら記憶もあるから大丈夫。酔った状態で話した会話なんて翌日には覚えていないのが愛未のお決まりだった。
「麻咲さんは、友達にまぁちゃんって呼ばれてるんですね?可愛いな。」
「可愛いですか?さっきの先輩の返事返しておきます。待たせるの悪いので。」
「僕には、どう呼ばれたいですか?」
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