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目の前にいる彼に緊張してしまう。私は、ゲームが好きでアプリ製作に携わる仕事に就職したようなものだから。
「麻咲さんの名字教えていただけませんか?」
丁重な口調で私に微笑みかけながらコミュニケーションをとってくる爽やかな年下君、いやっ川崎さんと呼ぼう。
「田神です。恋愛アプリの企画で仕事に疲れた女性の為の癒し系恋愛アプリゲームを作りたいと考えているのですが、全くいい案が出なくてお手上げです。」
「そうなんですか。田神さんは、恋愛に夢中になった事ってありますか?」
いきなり直球な質問に私はただ動揺を隠しきれなかった。いつもは、COOLなイメージで売っているのに平常心が保てない程の動揺っぷり。
「…残念ながら恋愛に夢中になった事はありません。」
「だったら今回の企画で恋愛アプリゲームを考える前に田神さん自身が恋愛した方がいいですね。あくまで、田神さんがダウンロードしてまでプレイしたい気持ちになるものを作れるように必要ですよ?」
川崎さんの言った事が、私の心に響いた。恋愛もまともにした事の無い私に恋愛をしろと。恋する気持ちなんて忘れてたのに、ゲームを作るならやる気スイッチが入りそうだ。
「相手もいないのに恋愛するなんて無謀では無いですか?」
「身近な異性に恋をするのはどうですか?例えば、僕とか。」
はい?私はさらっと言った川崎さんの言葉にキョトンとなる。随分自信があるようで羨ましい。恋愛上級者とかかも。
「えっと、会社の人にしますね。川崎さんとはあくまで製作で協力してもらうのでそういうのは遠慮しておきます。」
「そうですね。言ったものの、僕も気まずいなと思いました。名刺渡しておきます。それと、現時点で田神さんが考える恋愛ゲームの案を聞かせて下さい。」
仕事になると顔がキリッとなり切り替わった。出来る人は違うなと感心してしまう。年下の川崎さんに年上の私がリードされそうだった。
「今回の恋愛ゲームのテーマは仕事で疲れた女性の心を癒すものです。帰ってきて着替えて携帯チェックしてからのゲームに至る迄の時間ですが、私ならお風呂タイムまたはリラックスした時にと考えます。」
「そうですね。恋愛ゲームをすると疑似恋愛とは言え、脳が感じとりそういうホルモン物質を出していると思います。」
「それもそうですが、実は今回ゲーム以外にもアイテム製作も考えています。」
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