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川崎さんと仕事の話をしている内に時間はあっというまに過ぎていった。三枝さんからは、今日は直帰しなさいと、タイムカードは打ってあげるからと。
その代わり恋愛報告は必ずする事とラインがきていた。
「今日は長い事拘束してすみません。田神さんと仕事の話をしていたら楽しくて時間経つの早かったです。これは、僕からのお詫びと楽しかったお礼です。この店の自慢のブレンドコーヒーと焼きたてアップルパイです。」
「ありがとうございます。こちらこそ、川崎さんと仕事が一緒に出来るなんて夢みたいでした。これからもよろしくお願いします。」
川崎さんから、手土産をもらうと耳元で囁かれた言葉に私は固まってしまった。
「仕事以外でも会ってくれますか?その時は麻咲さんて呼びますね。仕事LINEじゃないのも名刺裏に載せてますから登録お願いします。」
「…仕事オフの時の私は、イメージと違うのでがっかりしますよ。LINE登録はしておきま
す。私、駅こっちなのでさようなら。」
あくまで仕事上の付き合いだと自分に言い聞かせた。内心はそうじゃないのに、不器用な私が嫌になる。
「待って下さい!駅まで一緒に歩きましょう。僕も、あの駅利用してますから。」
背後から声をかけられて私の隣に来た年下君は、ニッコリ微笑むと自然体で私の空いていた手を繋いだ。脳内で会議が開かれる。
『こんな素敵な彼が今までにいた?』
『いないけどさ、手慣れた感が凄いし年上女性の心掴むの上手いから不安。』
『完全に彼のペースでテクニックに翻弄されてるけど、信じて大丈夫なのかな?』
『彼の目に嘘は無いし、騙して何のメリットがあるのよ。』
駅まで着くと、川崎さんは私の手を離すと思っていたのにまだ繋いだままだった。まさか、このまま乗車するつもり?脳内会議の結果は、彼を信じて任せてみるというので意見が一致した。
「どうかしました?この駅の地下鉄痴漢がよくいるみたいで心配なんですよ。なので、そういう時に異性がいてくれると安心しますから任せて下さい。」
いやいや、そうじゃないでしょ。と突っ込みたくなったけど、言葉を飲み込んだ。完全にこの爽やかな笑顔の年下君ペースに巻き込まれている私がいる。
「お願いします。」
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