人間の塔

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「日本人がスペインでカスティなんて、来る前は笑われるだけでした」とキリストのような髭面の大垣君は言った。「今は笑われるどころか、存在に気づいてすらもらえません。いいカスティを組んで、結果を出すしかないんです」 「自分は、一段でも高いポジションを狙いたいです」と小柄な丸顔の円城君は言った。「先のことはわかりません。今はただ、あがくのみです」  カスティあるあるで盛り上がったあと、酔いが回ったカスティの卵たちは、店内でピラミッドを作ったり、三人塔や四人塔を組んだりした。あきれ顔の店員に「君たち、飲んだら組むな。組むなら飲むなだよ」と、やんわりと注意されていた。  酔いで顔を真っ赤にした冠木君は、崩れたピラミッドの下敷きになりながら大声で笑っていた。束の間の休息だ。
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