人間の塔

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 公式練習二日目。  その日は、候補生たちをレギュラーの中に入れてフォルラや四人塔の上段をやらせるなど、テストらしきことが行われた。本格的にふるいにかけていくのだろう。  公式練習での候補生の役目のひとつは、欠席したレギュラーの代役をこなすことだ。その日は、冠木君と同じ中段のレギュラー選手が欠席していた。  中段の候補生はほかに四人いて、みな優秀で、そつなくカスティを組んだ。冠木君は、身体能力は負けてはいないが、スペイン語の指示を間違えたり、判断が遅かったり、素人の僕が見ても見劣りする存在だった。焦りは焦りを産み、連続で指示を間違えた彼は、ついに中段から外され、以後はピーニャしかやらせてもらえなくなった。  その様子を黙って眺めていたピーニャ・リーダーであり総監督のロメオに、僕は彼の感想を訊いた。  ロメオは僕の問いには答えず、「うーん」と喉が詰まったような声を出すだけで、じっと候補生たちの闘いを静観していた。  中三日開けた後、週末に三日連続の練習が行われることになった。     
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