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「俺はおまえを一生許さねえ。許してほしけりゃ、俺の代わりに十二段塔を完成させてみやがれ」
セバスチャンは病室でジャンの寝顔を眺めながら、若いロメオに言った。「高層塔の完成にはピーニャと二段目基礎の強化が欠かせない。ジャンは強固な土台作りに命を懸けていたんだ。上段の高度な技を産む最強の土台。それが俺たちのチームの誇りなんだ」
ロメオは、その日から父のユニフォームを着て、父の代わりに土台になった。
「覚悟がちがうんだよ」
ロメオは遠い目で語る。
ロメオのチーム〈バルト〉は国内大会で何度も優勝する強豪だ。十二段塔は、今から十八年前のブラジル大会で一度成功させたが、それ以来、二度と組んでいない。ロメオは「できない」と判断すればすぐに作戦を変更する柔軟さを持っていた。ひとりひとりが限界を超えることは必要だが、監督として、彼は倒壊につながるあらゆる芽を摘む能力に長けていた。
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