人間の塔

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 ここで、一人のカスティ選手の卵を紹介したい。  冠木(かぶらぎ)健太(けんた)。二十一歳。茨城県常総市出身。カスティを学ぶために仕事を辞め、単身スペインにやってきた。ファブロソ西地区の安アパートに下宿している。  どちらかというと小柄だが、がっしりした体格。坊主頭で、笑うと目が点のような窪みになる、典型的なモンゴロイド系の素朴な顔立ち。訊くとはぐらかすが、おそらく童貞。  小学生の頃、近所に住んでいたスペイン人の宣教師からカスティを学び、アンチャネータとアッチャカドーを経験し、カスティの魅力に取りつかれた。つくば市のカスティクラブに所属していたが、プロチームやカスティ大会のない日本を飛び出し、聖地ファブロソへやってきた。 「来たときは、ガチでびっくりしました。そこらじゅうで人ががんがんカスティ組んでて、まるでファンタジーの世界でした」     
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