人間の塔

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 ワンとヨハンがチームの練習に出かけると、冠木君もどこかに出かける準備をはじめた。服はカスティ用の白ズボンと白シャツ。ファッソという長い布製のベルトを腰に巻いていた。 「練習?」 「いえ。でも、いつでもカスティができるように、出かけるときはなるべくこの恰好でいるようにしてるんです」  向かったのは、歩いて五分ほどの路地にあるベトナム料理店だった。彼はここで給仕のアルバイトをしていた。たどたどしいスペイン語でメニューを聞き、汗だくでフォーや生春巻きを運ぶ。日当三〇ユーロと賃金は安いが、まかないつきだ。その日はランチタイムのみの勤務で、三時上がり。そこからの自由時間をどう有効に使うかが兼業アスリートにとっての勝負どころだ。  冠木君はまっすぐ広場に向かった。  市庁舎前の中央広場では、あちこちでカスティの塔が立ち上がっていた。  何十人もの人だかりがピーニャを作り、その上に同じ構造のフォルラができる。そして三段目で四人の男が円陣を組んでいる。その上にも同じく四人が円陣。それが五段、六段、と積み重なっていく。     
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