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青空補給所
何かとタイミングの悪い人間がいる。麻子にとって、瑞希がそういう人間だ。
金曜日の夜、瑞希からメールが届いた。
――明日、秋のドライブに行かない?
仕事で発生したトラブルを連日の残業でどうにかリカバリーし、週末はひたすら家でゴロゴロしようと決めてコンビニで新商品のチョコレートを買った帰り道のことだった。
瑞希の誘いはいつも突然だ。しかも何かとタイミングが悪い。以前も、会社でミスをして叱られた日に瑞希からメールが届いた。免許を取ったばかりの瑞希に初めてドライブに誘われたのは、大学生になって初めてできた彼氏と別れた日だった。
誘いを断るのは簡単だ。「疲れているから」と正直に言えない仲ではない。しかし、麻子は「車で寝ちゃうかもしれないけどいい?」と返信した。
瑞希は高校時代からの友人だ。高校生のころ、麻子は決して友人が少ないほうではなかった。しかし三十代になった今、高校時代からの友人は瑞希だけになっている。
高校生のときは、友情を阻むものは愛情だと思っていた。彼氏ができて友達との約束をすっぽかすような子を見て、ああはなりたくないと思っていた。
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