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原因は、ボルヘスが慣れないアスファルトの道路で後脚を痛めたことだ。
特別に市から貸し出された公園の芝生で、ほかのチームの駱駝たちとともに横になるビクーニャと、座りこんでその首を抱く華奢な少女。ディエゴがポータブルの照明器具を頼りに応急処置を行う。
「目標は完走だ。無理はさせず、しばらく休ませよう」とディエゴが言った。
「しばらくって?」ミランダが腰に手を当てて言った。ガブリエラにも劣らず小柄だがアスリートのように筋肉質な彼女は、医者というより軍人に見える。
「5日は様子を見たいところだ」
「引き離されるわね」
一定期間ごとに、マカオまでの距離による順位が下位三割以下のチームは失格となる。先は長いが、なるべく上の順位にいるほうが安全なのだ。
「野生動物は回復が早いとはいえ、徐行でもレース復帰は3日後ってところだな」
「そんなのだめよ!」
ガブリエラが言った。
「はやく行かなきゃだめなんだから!」
ガブリエラの剣幕にアギーレ監督は、一瞬、戸惑いの表情を浮かべた。
「先は長い。今月中にイタリアに入れば十分だ」
ガブリエラは納得がいかない様子で、次の日も、メンバーの静止を聞かず、早朝から公園でボルヘスの騎乗をはじめた。
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