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ホテルでは、厨房を借りたハメスが特製のフルコースを作って笑顔で待っていた。
「きっとよくなるさ。ボルヘスにいつでも乗れるよう、君もコンディションを整えなくちゃ」
監督もガブリエラを励ました。
レストランの隅のテーブルで、僕は彼らの様子を眺めていた。
「いいチームね。あの監督、人選力だけは確かだわ」
ハゲタカのフランソワ女史が向かいの席に座っていた。運営事務局と提携しているこのホテルには関係者が多く泊まっている。彼女は全チームが通過するまでここに滞在する予定だという。
「あなた、ワタリガラスは初めて?」
「ええ。まさか、はじめてのチームがビクーニャだなんて」
「あなたはラッキーよ。この先、長い旅になる」
近づいてきたウエイターに、知的な中年女性は流ちょうなスペイン語で紅茶をお代わりした。
「ほとんどのチームがヨーロッパから出る前に脱落するわ。毎年、バルセロナの担当になるんだけど、どのチームがどこまで行けるか、見ればすぐわかる。ボルヘスはきっと完走する。ガブリエラの気持ち次第だけど」
一瞬、彼女がガブリエラの脱走計画を知っているのかと思ったが、そんなわけはなかった。イタリアで逃げるつもりだということは僕にしか話していないはずだ。
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