偉大なる旅路

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 ボルヘスがバルセロナを出発したのは三日後だった。ボルヘスは見違えるように回復し、軽快に走った。途中、サグラダファミリアをバックに四人と一頭は記念写真を撮った。  二日後の夕方過ぎ、チームはフランスに入国した。ペルピニャンで一泊し、次の日にモンペリエに到達した。順位は28位。ニースにいる先頭グループとの差はおよそ450キロメートル。  予定よりやや早いペースでマルセイユに着くと、チームはここで丸一日、休憩をとることにした。ガブリエラは監督の指示を前よりもよく聞くようになっていた。ペースを守り、ボルヘスに無理をさせなかった。  このころにはガブリエラはヨーロッパで有名になっていた。「ビクーニャに乗って大陸を横断する美少女」とテレビやSNSで話題になり、ひとびとは公園でボルヘスと一緒にいるガブリエラを取り囲んで写真を撮った。彼女は顔を赤らめて握手をし、サインをした。  僕はマルセイユでも彼らと同じホテルに泊まった。テラスから海が見えた。 「彼女は幼いころ、父親から性的虐待を受けていたの」  赤ワインを飲みながらミランダが白状するように言った。 「全寮制の学校に入学させるのも、それが理由でもあるわ」 「見た目、そんなトラウマがあるようには見えないけど」 「二年前、会ったばかりのころに比べると、すごく明るくなったわ」     
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