偉大なる旅路

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偉大なる旅路

 砂漠で行われる駱駝レースは珍しくないが、駱駝でアフリカ大陸を出発し、ユーラシア大陸を横断する長距離レースは世界広しといえどモロッコ発の「グレートジャーニー」だけだろう。  スタートは砂漠の入り口メルズーガだ。駱駝は「砂漠の船」と呼ばれるが、砂丘の上から見たオアシスの街並みは、まさに濃い砂色の大海原に面した港町である。  そこから東に向かってサハラ砂漠を横断してもいいが、ほとんどの選手は北上し、アトラスを超え、モロッコのタンジェからスペインのアルヘシラスに船で渡る。船などの乗り物は決められた短い航路のみ利用可能だ。  ゴールはマカオだ。アフリカを脱出し、ユーラシアに渡ったあとのルートは自由。人数や距離の制限はあるが、途中で乗り手が交代してもいい。騎手がいなくても、駱駝だけゴールしても問題はない。  ただし、騎手の乗っていない駱駝を、騎手がほかの乗り物に乗って誘導するのは反則で、騎手たちチームの人間は、徒歩以外では、走行中の駱駝の半径150メートル以内に入ってはいけない。騎乗しないなら、歩いて誘導するしかないのだ。     
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