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ハングリーエイプ
バスの後部扉が開くと、どやどやと、毛むくじゃらのちびすけたちが乗り込んできた。座席は彼らの小さな身体で埋めつくされていく。ひとつの座席に、二、三匹が折り重なるように座り、さらに、座席の下にも小さいのが潜り込んでいく。
全部で二十匹はいるだろうか。全身を覆うもさもさした毛のせいで、体型は全体的に丸っこく見えるが、あんな隙間に入り込めるということは、痩せっぽちなのだろう。
身長は、大きい者でも一メートル足らず。母親の背にしがみついている子どもは30センチぐらいだ。
バスが動き出すと、彼らは座席にしがみつき、静かに揺れに耐えた。お年寄りに席を譲ることはないが、おしゃべりをしたり、暴れたりしてほかの乗客に迷惑をかけることはない。彼らなりのマナーというか、処世術なのだろう。
「次は、公園前、公園前です」
子猿が手を伸ばして、降車ボタンを押した。
公園前に着くと、団子状態になっていた猿たちは、するすると座席から離れていく。そして、列になって運賃箱に一円や五円玉を入れていく。中には、飴玉を入れようとする猿もいたが、運転手が面倒くさそうに手でそれを防ぎ、払いのけた。
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