第5話

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この会社に務めて早5年。 去年から上司(課長)が入れ替わり お局様が退職し、明るくなるかと思われた社内。 しかし、新しくなった課長はほぼ毎日パワハラをしていた。 ある日の定時、17時。 「お先に失礼します。」 勤続十数年の先輩が足早に帰って行った。 入社1・2年の若い子達も帰ろうと 荷物を手に取った時だった。 「おいお前等!まだ帰るなよ!仕事が残ってるだろ!」 課長がいきなり怒鳴りつけた。 「・・・あのー課長?急ぎの仕事じゃないから後回しにしても良いと言いましたよね? 急ぎの仕事はもう提出しましたけど・・・」 2年目の若い子が恐る恐るそう言うと、 課長は若い子達を睨み付けて言った。 「俺はそんな事一言も言っていない! 5年遡ってもそんな事は言った覚えはない!」 社内の誰もが『また始まった』と、思っていた。 そう。 この課長は言った事を無かった事にし、 責任は全て他人に押し付ける最低な上司だった。 結局、その日は私の仲の良い後輩も残業させられ、子供の迎えに間に合わず保育所にも迷惑をかけてしまったと後日聞いた。 日に日に募る、社員達の苛立ちと不満。 私や先輩達に泣きつく子達も増えていった。 見るに見兼ねた私は、その日から日記を付け、 勤務中は毎回の様にボイスレコーダーで録音するようにした。 1ヶ月後。 社員の皆に協力して貰い給料明細書に残業手当てが付いているか、確認して貰った。 翌日、私は休みだったが、 仲の良い先輩と後輩を連れ、 部長のもとに向かった。 一通りボイスレコーダーの音声を聞いてもらってから、全て報告した。 しかし、部長の口からは信じられない言葉が返ってきた。 「あいつはこういう所あるもんねー。 職場の雰囲気悪くなるよね。 ・・・逆にさ、菅野さんがこう、上手くまとめてくれれば良いんじゃないかな?」 その後も、3時間以上話をしたが全く対応してくれる気配もなく、諦める他ないのだと思わされた。 しかし、私だけは納得いかなかった。 シングルマザーの私に、高い弁護士費用を払うのは、とても辛かったが一か八かの賭けに出た。 「勝訴」 たくさんの時間とお金はかかってしまったけれど、課長は解雇、部長も社員に頭を下げて謝罪し、3ヶ月の減給になった。
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