3.理想の彼と現実の彼

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「ちょっと尚孝! もう、7時なんだけど!いい加減起きてよっ」 ダイニングテーブルの上に置いた鏡を見ながら、はみ出した口紅を修正し、寝室に向かって声を上げる。 ホットビューラーであげた睫毛にコートとマスカラを塗り終えても起きてくる様子のない尚孝にイライラしながら、髪をアップにまとめて椅子から立ち上がった。 我が家は玄関を入るとすぐにダイニングで、奥にリビングと寝室がある1LDKだ。 元々は尚孝が独り暮らししていた部屋で。 付き合いたてのころは、常に側にいれる広さが嬉しくもあったけど、今となっては家中どこにいても、声が届く、くらいの利点しか思いつかない。 早足でリビングに入り、すぐ横の寝室を覗くと、案の定ベッドの上で布団に丸まった尚孝は、呑気な高いびきをかいていた。
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