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のみちゃんからの贈り物
高校は冬休みに入った。
高月晴樹は、せっかくの休みだからと怠惰な時間を満喫していた。
炬燵に潜り込み、テレビをつけたままうとうとして過ごす平和な昼下がり。
だが、そんな平和は一本の電話によってあっさりと打ち破られた。
電話の主は加古川通子。高校における晴樹の先輩で、ついこの間からお付き合いを始めた恋人でもある。
メールアドレスも交換したし、メッセージのやり取りや無料通話ができる例のアプリにもそれぞれ登録してある。
そんな中で、彼女はそのアプリの無料通話機能を使って電話をかけてきたのだ。
晴樹を巣食っていたうとうとは、瞬時にどこかへ消し飛び、彼は充電中だったスマートフォンに飛びついた。
「は……はい!! もしもし」
「休みだからと言って時間を無駄にしてんじゃないわよ。駅前のベリーズキッチンに集合よろしく」
まるで見ていたかのように言われ、何となく反論してみる。
「すっごい有意義に過ごしていたかも」
「かもって言ってる時点で違うね」
ぐうの音も出ない。
「万が一寝てたら起こしてやろうと思って電話にしてみたんだけど?」
彼女はしれっとそう言った。
「ね……寝てるわけないでしょ? もう昼の一時ですよ」
「なら良いんだけど。先に入って待ってるね。急いでよろしく」
電話は切れた。
拒否されるわけが無いという態度。
もちろん、晴樹に拒否する気なんて無かったので、いそいそと出かける支度を始めた。
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