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春、肉まん
冬は終わり、桜咲く春の始まり。
ふわりと風が吹いて、彼女の持つ真っ白な肉まんに花びらがひらりと舞い降りる。
彼女はその事に気づかず、あーんと大きく口を開けて────ぱっくん。
「んー……おいし!」
──けど、あれれ?
もぐもぐと肉汁たっぷりの味わいを噛み締めつつ、眉根を寄せ覚えた違和感まで噛み締めている。
彼女の頭上にたくさんクエスチョンマークが見えるような気がする光景だった。
よく見たら、黒髪のポニーテールにも桃色が乗っかっていた。
また風が吹いて、更に一枚と結われた黒髪に桜が飾られていく。
セーラー服のスカートが踊るようにひらひらと揺れ────程よい肉付きの太ももがチラリ。
その女の子はスカートが風で捲れることも厭わず、ただ幸せそうに肉まんを食べていた。
肉まんとそれを美味しそうに頬張る女子高生。
春になって早々、僕が出会ったのはこの組み合わせだった。
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