1.目

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「……さん、……さん、ちょっといいですか、」 「…………あ、はい」 パチン… 「……っ、は」 気づけば長時間その人と目を合わせていて、彼が誰かに声を掛けられてどこかへ去るまで、まるで催眠術にでも掛かけられていたかのように、僕とその人はずっと目を合わせていた。 彼がそこにいなくなってから、僕はようやく息する事を思い出し、そのとき初めて呼吸するのを忘れていた事に気が付いた。 周囲に怪しまれないように、は、は、と息を小出しに吐いて、僕は呼吸を整える。まるで時間が止まっていた。 急にその目線の縛りから解かれ、氷が溶けていくみたいにじわーっと全身に熱が緩んでいくのを感じて、急に汗が吹き出てきた。 突然、人と目があって、離れなくなってしまった。 こんなこと、はじめてだった。
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