第1話:泣いている瞳の裏側で

2/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
 神社仏閣を縫い合わせるように続くこの道は東山遊歩道と呼ばれる。ところどころに残される石畳や、苔むした階段、僕はそんな歴史を感じさせる情緒をたっぷり含んだこの道が嫌いじゃない。ただ、先に進むにつれて、僕の心にじんわりと、でも確実に鋭い痛みを帯びてくるのがわかる。  僕に何かできることがもう少しあったのではないか……。いや、それはただの利己主義的な考えなのだろうか。そんな自責と後悔が入りまじった複雑な思いが消えることはない。おそらくこれから先もずっと。 ★  今から5年ほど前、高校二年生の時だったから、僕たちは十七歳やそこらだった。僕にはいろいろと厄介な家庭の事情もあり、栃木県足利市という北関東でも内陸の小さな町から、東京都の練馬区へ引っ越すことになったのだ。  フリーライターの仕事をしていた兄がもともと練馬区に住んでいたこともあり、当面はそこで生活することになっていた。高校の転入にあたり、いろいろと面倒な手続きがあったが、兄が一通りやってくれていたので、僕は転入試験に集中することができた。  彼女と出会ったのは、転入先の高校に、初めて登校する日の前日。その日は、新宿、渋谷と並ぶ、山の手三大副都心の一つ、池袋に向かう途中だった。兄から池袋に、わりと大きなプラネタリウムがあると聞いて、是非行ってみたいと思っていたのだ。     
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!