第2話:図書室での会話

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 真っ白になった頭から、なんとか視界を取り戻し、動揺を隠しながらもぎこちない足取りで、先生が指差した机に向かって歩いていく。教室の一番後ろ、端から二列目。右隣に座る葵を見やる。 「ああ、えっと、よろしく」  僕が声をかけても、葵は何も言わずに、ただ黒板をじっと見つめていた。 「そいつ、何も話さないぜ。あ、俺は佐々木、よろしくな」  左隣りに座る佐々木大地(ささきだいち)は、坊主頭で背が高く、もう見た目から野球部をアピールしていた。僕は他人との距離感を図るのがあまり得意ではない。なんというか近すぎでも、遠くてもあまりうまくいかないんだ。正直、佐々木の第一印象はあまり得意なタイプではないという直感だった。  高校二年ともなると、仲の良い連中同士でグループが形成されていて、なかなかその中に入っていくのも難しかったりする。どうしても行動は受動的になりがちだ。こちらから何か誘う、というような空気をつかむことは結構難しい。部活に入るのも気が引けたし、特別友人が欲しかったわけでもなかった僕は、昼休みや放課後は図書室に行くようになった。  幸いなことに、僕が転入した高校の図書室は割と大きく、蔵書も豊富だった。僕は開室時間を過ぎるまで、そこで小説を読んだり、天文学の本を読んだりしながら過ごすことが多かった。一人でいることが苦にならない僕にとって、それはそれで充実した毎日だったように思う。     
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