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第4話:君の笑顔が見たくて
葵とプラネタリウムへ行く前日だっただろうか。授業が終わると、僕は担任の藤田先生に職員室へ来るよう言われた。職員室が得意な学生はあまりいないように思う。むろん僕も苦手な空間だ。
職員室の空気は学生にとって無言の圧力を有している。授業中に図書室で借りた小説を読んでいたのがばれたか、あるいは……。なんとなく、もやもやした気持ちで、職員室の扉を開けた。藤田先生は部屋の奥、窓際の机で何かの書類を作っているようだった。
「城崎、学校は慣れてきたか?」
「ええ、だいぶ」
「そうか、ならいいんだが、今日はちょっと相談というか、お前に頼みたいことがある」
先生は椅子に腰かけたまま、いくつかの書類を机の中にしまい、僕に向き直った。
「月本葵のことだ」
「葵がどうかしたんですか?」
「お前、彼女と仲が良いそうだな。佐々木から聞いたよ」
「あ、いや別にそんなんじゃ」
「いや、いいんだ。すごいことだよ。お前と出会って彼女はだいぶ変わったと思う。見ていてわかるだろう? あいつ、絶対に他人と話をしようとしないんだ」
そう言うと、先生は、机の奥にある書類棚から茶色い封筒を取り出した。
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