第5話:一瞬の勇気か、一生の苦しみか

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第5話:一瞬の勇気か、一生の苦しみか

 日記を始めた当初は、だいたい一日おきで交換していた。初めて会った時の印象とはまるで別人の葵の姿が、そこには存在した。昨日食べた夕飯の内容や、毎年十一月に夜空を舞う、しし座流星群の話、自分の好きなテレビドラマや音楽の話であるとか、葵が書いたであろう挿絵と共に綴られていて、何も言葉を発しない実際の葵とのギャップに驚いた。そして、彼女は絵を描くのがとても上手だったことを初めて知った。  そんな日記につづられる葵の日常を思い浮かべながら、僕もなるべくありのままの自分を文字にしようと思った。さすがに絵を描くのは無理だったけれど、栃木の話や、自分が星を好きになった理由、好きな映画とか、とにかく等身大の自分を葵に知ってもらいたいと思った。  そんなやり取りが一か月ほど続いたころだろうか。葵は学校を休みがちになってしまった。なんとなく体調が悪そうだったのは日記の文章を見ていても分かった。 「無理しなくていいよ」     
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