105人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
離れていれば、たまに遊ぶくらいなら、いろんな衝動なんてどうにでもごまかせるはずだし、この性癖がバレなければ、ずっと友達でいられる。
不断の努力と細心の注意が功を奏し、おれたちはどこにでもいるフツウの友達として高校三年の夏を迎えていた。
◇◇◇
「問2、間違えてる」
おれが指摘すると、汀はさっとノートを隠す。
「勝手に見んなよぉ」
「教えようか」
「いい」
「あっそう」
兄の直登と二人部屋なのが落ち着かないらしく汀は我が物顔でおれの部屋に居座る。今も宿題だかなんだかよくわからないが問題集をもくもくと解いている。
見るなと言われたので自分の参考書をひろげていると「なあ、」と話しかけられた。
「母さんが言ってたんだけどさあ」
「ん?」
「T大受けるってほんと?」
「おれ?」
「ほかに誰がいるんだよ」
「あー、うん。まあ」
「まじか・・・麻也がT大?なんになるつもりだよ、なんでそんな勉強してんだよ」
「ほっとけ」
「小六まではおれのほうが頭良かったのになあ」
「いつの話してんだ」
テーブルに置かれたスマートフォンが鳴る。よく日焼けした腕が伸びて平べったい機械を掴む。
「おっ山田からだ。来週の花火んときに集まるって」
最初のコメントを投稿しよう!