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 おれの好きは、あいつの好きとは違う。  その事実に気がついたのは、中学二年の夏休みだった。  同じマンション、同い年、幼稚園からずっと一緒だった原口(はらぐち)(みぎわ)について、当時のおれが知らないことはなかっただろう。  誕生日(5月5日生まれ)も、血液型(O型)も、家族構成(四人家族、二人兄弟の弟)も、成績表(おれより低い)も、小学三年までおねしょをしていたことも、精通した日すら知っている。  同性の幼馴染、それがおれの初恋の相手。  となりでたくましく育っていく体つきにそわそわしていた。自分を落ち着かなくさせている原因が性的に惹かれているからだ気づいたときの絶望と罪悪感。  友達を裏切っている気がして、となりにいることが後ろめたくなった。  だから、エスカレーター式の学校で高校受験の必要などなかったのに、おれは別の高校への進学を選んだ。両親を納得させるため学校のランクを上げる必要があり必死で勉強した。  なにより怖かったのは、(みぎわ)に嫌われることだった。友達としていられなくなることだった。近くにいては自分で整理できない気持ちや苛立ちをぶつけてしまいそうだったから、物理的に距離をとる必要があった。
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