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「瀧尾のあだ名、聞いたことある? 」
「二年生受け持ちの瀧尾先生のことですか。地学講師の」
「そ。Dr.タキオン。或いはそのままでタキオちゃん」
「何ですか、タキオンって」
「相対性理論ってあるだろ。タキオちゃんが授業中よく脱線するんだよね。そこから始まって」
「アインシュタインですか。地学からの物理の基本? 」
「タキオンってのは、光速度を超える仮想の粒子なんだな。まぁ、実際には存在が確認されてないんだけど、特殊相対性理論には矛盾していないらしい」
「それって、本当にあったりなんかしちゃったら、色々とまずくないですか」
「タイムマシンが作れるかもしれない」
「SFじゃないですか」
「それ、な。超光速だと時間がゆっくり進むって言うだろう? 映画や小説において、宇宙へと超光速航法で旅立った飛行士が地球に帰還する。と、本人は現役で変わらないのに、恋人が鬼籍に入っていたという悲劇が起きる」
「お約束ですね」
「現実には時は平等、科学も平等だけども。このタキオン粒子を活用すると」
「すると? 」
「人は過去に戻ることはできないけれど、昔を思い出しているときっていうのは、本当に思考だけが過去に戻っているっていう論理があるんだが」
「それはいいんですけど、何なんです。結局」
「タキオン粒子が本当にあったらいいな、と」
「どうして」
「今、キミが撮った写真があるだろう? 」
「花びらが舞った瞬間が撮れましたよ」
「例えば。いつかその写真を見て、キミが誰と一緒にいたかを思い出したとしたら。キミの思考が過去にタイムスリップしたとき、思考の中の俺はタイムスリップすることができるのかもしれない」
「ロマンチストですかっ!! 」
「馬鹿ヤロウ。これが理系男子の定石だ」
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