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崙土は仕方なく控室を出て、非常階段のドアを開けると、一人の記者風の男がタバコを吸っていた。
崙土は会釈してタバコを咥える。
「嫌ですよね…。どこもかしこも禁煙で…」
記者風の男は崙土にそう言った。
崙土はその男を一瞬だけ見ると煙を吐いた。
「ええ…。いつからこんな風になってしまったのか…」
崙土は咥えたタバコを手に持って眺めた。
「あ、知ってますか…。このタバコの太さってのは女性の乳首の大きさを参考に作られたらしいですよ。男が咥えて違和感がない様にって事らしいです…。昔は金持ちの男の嗜好品だったんですね…」
記者風の男はそれを聞いて、笑いながら崙土に近付く。
「流石は椎名崙土先生…。博識でいらっしゃる」
記者風の男はポケットから名刺を崙土に渡した。
「申し遅れました。私は週刊ファーストスクープの宇治宮と申します」
崙土はその名刺を受取り、興味無さそうにポケットに入れた。
「週刊誌の方ですか…」
崙土は手摺に肘を突いて景色を眺めた。
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