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「それでは椎名崙土先生をお呼び致しましょう」
ステージの上で司会を務める女性がマイクを握ってそう言った。
崙土と和美はその声を聞きながら廊下を歩いていた。
「記者から幾つか質問があると思うのですが、作品について以外の質問は無視してくださいね。もちろん司会者にも伝えてありますし、私も対応します」
和美は崙土の横を歩きながら早口に言う。
「はいはい。何でも答えますよ…。パンツの色とかね…」
崙土と和美はスタッフに招かれるままにその部屋に入った。
そしてそのままステージへと入って行く。
一斉にフラッシュが焚かれ、崙土は自然に目を細めた。
「今回『今夜、雨のあとで。』を発表されました椎名崙土先生です」
司会者の通る声が崙土には不快に感じた。
沢山のフラッシュに向かい一礼すると、並べられた椅子に座る。
崙土が座るとフラッシュが収まった。
退屈な時間が始まる。
後ろに立つ和美に不満の表情を見せながら、崙土は会場に向かってニコニコと笑みを見せた。
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