ゴーストライター

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莉彩はゴーストライターの文字を指差した。 「お酒ばっかり飲んでて、それが原因で疑われて…最悪じゃん」 「だ、大丈夫だよ…。お前も言ってたじゃんか。絶対にばれる事もないしさ、知っているのは…お父さんと莉彩だけなんだから…」 ポケットで携帯電話が振動している事に気付き、取り出す。 和美からだった。 崙土は通話ボタンにタッチして電話に出た。 「先生…。そちらにもFAX…、行ってますか」 和美は静かに言う。 「ああ、来てるよ…。あの宇治宮って奴だな」 崙土はテーブルに投げ出した週刊誌の原稿をもう一度手に取った。 「このタイミングでこれが出るのは良いか悪いか、こちらでも判断が付かずに困ってます」 和美は呟く様に言う。 崙土はその記事を読みながら返事をした。 「大丈夫だろう…。この週刊誌、一誌が騒いでいるだけだし…」 記事は専門家の意見も書かれていた。 文章は上手く椎名崙土の癖を捉えて書かれているが、基本的に女性の書く文章の様にも見え、ゴーストライターは女性である可能性が高い。 しかも年齢的には十代から二十代前半の女性であると思われる。 こんな事までわかるのか…。 崙土は苦笑して目の前の莉彩を見た。
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