ゴーストライター

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「魚住君、いないの…」 和美はオフィスを見渡すが朝から魚住の姿を一度も見ていない。 もう、椎名先生の原稿持ったままよね…。 魚住の携帯電話を鳴らした。 しかし何度コールしても電話は繋がらなかった。 「仕方ないわね…」 編集長の高木が和美を呼んでいた。 「はい、ちょっと待って下さい」 和美はそう答えて魚住にSNSのメッセージを送った。 「はい。なんでしょうか…」 「椎名先生の新刊の状況だよ。どうなっている」 高木はパソコンのモニターを見つめたまま訊いた。 「今、集計してもらっているところです」 和美はそう言って席に帰ろうとした。 「おい、野々瀬」 高木に呼ばれて和美はまた戻ってくる。 「なんですか」 「椎名先生の本名は非公開なのか…」 「ええ、本人の達ての希望です」 「わかった…」 高木は顔を上げて頷いた。 「おい、門脇」 高木は大声で叫ぶように呼んだ。
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