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気が付くと窓の外は暗く、崙土は部屋の明かりをつけ、椅子に深く座った。
リビングに置いたタバコを取り、その横に携帯電話を置いたままにしていたことに気付く。
和美からの着信が数えきれない程に入っている。
崙土はそれを見て苦笑すると和美に電話をかけた。
「先生」
和美はすぐに電話に出た。
「すまんすまん。携帯をリビングに置いたままにしてた。携帯から煙出る程鳴らしやがって、どうしたって言うんだよ」
「先生…」
和美は涙ぐんでいる様だった。
「初日、夕方の時点で十四万部売れました…一週間で初版二十万部は確実です」
崙土は胸を撫で下ろす。
しかしそれが和美にばれないように息を吐く。
「誰が書いたと思ってるんだよ。売れるに決まってるだろ…。さっさと増刷の手配しろ」
崙土は笑いながら電話の向こうの和美に言った。
「もう、とっくにしましたよ」
和美は泣きながら言う。
「ああ、そうか。だったら早く帰ってクソして寝ろ」
崙土は電話を切った。そして俯くと目を閉じて微笑んだ。
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