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壁にかかった服を見て、崙土は息を吐いた。
「もう秋なので少し秋っぽい服で」と和美は赤茶色のジャケットとチェックのパンツを出した。
どうしてもスーツが嫌だと言う崙土の言葉に折れたのだった。
崙土はリビングのソファに座り、アイスコーヒーを飲みながらタバコに火をつけた。
崙土は一年を通してアイスコーヒーしか飲まない。
ある雑誌のインタビューにも載っていたが、吹雪のゲレンデでもアイスコーヒーを飲んでいたらしい。
崙土はふと視線を感じ振り返った。そこには娘の莉彩が立って、クスクス笑ってた。
「莉彩…。起きたのか…」
崙土は莉彩に微笑むとタバコを消した。
「うん。朝まで書いてたからね…」
莉彩は崙土の向かいに座った。
「すまんな。出版社がうるさくてな…。勢いがあるうちに一気に書き上げましょうってな」
莉彩はクスリと笑った。
「今朝もワミさんにやられてたわね…。うるさいったらありゃしないわ」
「ああ、ごめんな。ワミにはきつく言っとくよ」
崙土がそう言うと、莉彩は崙土を覗き込んだ。
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