ゴーストライター

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「新作発表なんて、売れて人気のある作家がやる事じゃないのか…」 崙土は紙コップでアイスコーヒーを飲みながら言う。 「第一、俺はあんまり好きじゃないんだよ…。メディアに顔を晒すのが…」 横に座る和美は、そんな崙土を完全に無視して打合せを進める。 「先生…。お言葉ですが…」 打合せを終えてスタッフが去って行くと、和美は表情を変えて崙土を睨んだ。 「先生の前作、どれだけ売れたと思ってるんですか。ファンは待ち望んでるんですよ。先生の本を。新作発表のイベントもファンサービスの一つです。我慢してください」 崙土は紙コップをテーブルに置いて脚を組んだ。 「ふん…、どうせ発行部数のためなんだろう」 崙土が呟く様に言うと、和美は顔を近づけた。崙土はそれに威圧されて体を引く。 「そうです。その通りです」 和美は立ち上がった。 「発表会でそんな顔したら、後ろから蹴り上げますからね」 そう吐き捨てて控室を出て行った。 崙土はタバコを咥えてポケットのライターを探す。 そこに足早に和美が戻って来て、咥えたタバコを取り上げた。 「ここ禁煙です」 和美は壁の「禁煙」のプレートを指差して微笑んだ。
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