君の味方

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「……それで、学校はあれはいじめじゃないって言うんです。加害者生徒も、悪ふざけのつもりだったって。あいつら、うまく証拠残さないようにやってましたから……。仕方ないんですかね」 「うーん……。ヒロくんの主張が通らないのは、辛いね」  ヒロくんが新しい学校に通い出して二週間経ったある日の夕暮れ時、私たちはまたあのカフェで待ち合わせて喋っていた。  新しい学校での生活は、上手くいっているらしい。元々、社交的な性格のせいもあるだろう。ヒロくんは、憑き物が落ちたようなすっきりした顔をしていた。 「本当にミカゲさん、ありがとうございました」  急に頭を下げるものだから、私は慌ててしまう。 「そんなことないよ。勇気出したのは、ヒロくんだし」 「でも……俺が勇気を出せたのは、ミカゲさんがいつまでも味方だって言ってくれたおかげです。……不思議なぐらい、力をもらいました」  ヒロくんの爽やかな笑顔を見て、私もつられて微笑む。  そして、後悔が私を今も(さいな)む。先輩も、私の対応が違えば、今も生きていてくれただろうか。  でも……一度失敗した私だからこそ、誰か困っている人がいたら、助けたいと思う。いつでも言いたいと思う。「私はあなたの味方だ」と。  だって、会社に行くのが辛い時、先輩は私の味方なんだと思えば勇気が出たから。  誰かが自分の味方でいてくれるという安心感は、何事にも代えがたいものだ。  そう教えてくれた先輩に、もう一度「ありがとう」と「ごめんなさい」を言いたかった。 (了)
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