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「俺、もうどうすればいいかわからなくて……。学校に行きたくないけど、親には言えないし……」
声を震わせ、ヒロくんは一口カフェラテを啜る。
「でも、親御さんには言わないと……」
難しいとはわかっていても、私はそう諭してしまう。
「無理です。親に言うぐらいなら死にます」
一気に言い切ったところで、ヒロくんはハッとしたようだった。
「すみません……こうして、ミカゲさんに話せるのは――」
ネットでしかつながっていない、関係性の薄い人だからだろう。
ヒロくんの言いたいことを類推して、私は心の中で呟く。
ヒエラルキーの上にずっといたヒロくんは、挫折したことがなかったのだろう。親の期待に応えるのが当然だった。
いじめに遭い、「親に申し訳ない」と言って首をくくった子の話を思い出した。その、まだ大人になりきらない、細い首はどんな音をさせて折れてしまったのだろう。
また、就職活動が上手くいかずに、親にごめんなさいと謝ってビルから飛び降りた学生の話も、頭をよぎった。中高生よりはもちろん大人だが、まだまだ子供の領域に属する大学生は多い。これからいくらでもあらゆる土地を踏めた足で、ビルの屋上の床を蹴った時の気持ちは、いかばかりだったろう。
そこまで子供を追い詰める、親って何なんだろう。
私の疑問はともかく、ヒロくんは親に言うぐらいなら死ぬと言う……追いつめられるタイプの子供らしい。
私にできることは、何だろう。
考えて考えて、私はようやく切り出した。
「ねえ、ヒロくん。これから一週間、学校サボろっか」
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