君の味方

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 ヒロくんの希望は、某有名テーマパークだった。一度、平日に行ってみたかったと彼は照れくさそうに笑っていた。  私たちの最寄り駅は、幸い一緒だ。駅で集合した後、さすがに制服は目立つので、駅のトイレで着替えてもらうことにした。制服はロッカーに預けて、電車に乗っていざ出発。  テーマパークの中に入るなり、ヒロくんはほうっとため息をついた。 「すごい。平日でも人いっぱいだ。空いてるかと思ったのに」 「それでも、休日よりましだけどね」  休日に比べると、アトラクションに並ぶ時間も相当短くて済むだろう。  私も、ここに来たのは久しぶりなので、はしゃぐ気持ちを抑えきれなかった。  ヒロくんと一緒にお化け屋敷に入ったり、ジェットコースターに乗ったりと、私は普通にテーマパークを楽しんでしまった。  ヒロくんもよく笑ったけれど、時折どこか苦しそうな表情をした。きっと、今学校を休んでテーマパークに来ているということに、罪悪感を覚えるのだろう。みんな、逃げるのは簡単だって言うけれど。逃げるのだって、勇気が要る。我慢し続けている内に、逃げるのに必要な勇気がなくなってしまうこともある。  結局、夕方まで楽しんで、私たちは帰路に着いた。示し合わせたわけでもないのに、二人ともお土産を買わなかった。ヒロくんは買うわけにはいかないけど、私は……なんとなしに、家族や友達に買おうという気が起きなかった。  別れ際、ヒロくんは私に封筒を差し出した。 「すみません、チケット代とお昼代です。電車代は今度、払います」  私が「奢るよ」と言って払ったのを、気にしていたらしい。でも、さすがに学生に出させるのは気が引ける。 「いいよ、ヒロくん。今回は私に奢らせて。高給取りってわけじゃないけど、一応社会人だし」 「でも――」 「どうしても気になるなら、ヒロくんが大人になった時に返してくれたらいいよ」  それを聞いて楽になったようで、ヒロくんは表情を緩めた。
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