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「何がハロウィンだ。馬鹿馬鹿しい」
磯崎はそう吐き捨てると、自分の周りに居並ぶ群衆を見回した。
パンプキンを被ったり、魔女のコスプレをしたりしているのはまだ分かる。
だが、アニメキャラのコスプレをしたり、ただ単に露出面積の多い服を着たり。
あるいは大声でばか騒ぎをしたりする。
行進し、うごめく、人の群れ。
それは本来のハロウィンの形ではない。別に磯崎は原理主義者ではなかったが、ハロウィンと称して動きたいだけの奴等に汚されることには違和感があった。
まあ、この土田舎のこと。本当に自分達が必要になることはまずないだろうが……
磯崎はf県警の巡査である。
金曜の5時という時間帯。
本来なら町外れの交番に詰めているところなのだが、今日はハロウィンだというので特別警戒がくだったのだ。
連日報道されている渋谷のハロウィン騒動に煽られ、我が田舎町でも警戒を、という署長のお達しだった。
「ハロウィンなんてくそくらえだ」
警戒に詰めているというだけならまだよかった。この炎天下で騒ぐ群衆を押さえつけるのも警察官としての務めだからだ。
覚悟は出来ていたつもりだった。
しかし実際のそれは、自分が想像していたものとはほど遠いものだった。
だぼだぼのパンツに、血の色をした絵の具が散らばる。
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